本記事ではパルスサーベイの実施を検討している企業向けに、サーベイの概要や設問設計のポイントについて解説いたします。組織サーベイとは組織サーベイとは、企業が組織の課題を把握するために従業員に向けて行うアンケート調査です。サーベイにはいくつか種類があります。エンゲージメントサーベイストレスチェックパルスサーベイモラールサーベイモチベーションサーベイ詳細は組織サーベイの解説記事をご覧ください。パルスサーベイとは概要パルスサーベイは、脈拍(パルス)のように一定周期で行うアンケート調査です。他のサーベイに比べると、少ない設問の代わりに高頻度(毎週、毎月など)で調査することが特徴です。目的一般的に、サーベイは離職防止や社員の定着を目的としますが、具体的には以下のように使われることが多いです。スコアが低い社員や部署をフォローする(面談・管理職への改善指示など)スコアが低い原因を分析し、改善のアクションを行う特にパルスサーベイは頻繁に行うことにより、社員のコンディションやエンゲージメントの変化を検知しやすいことが特徴です。例えば月1回サーベイを行うとして、今までは連続で80点だったのに60点に下がった社員がいた場合、その社員のコンディションなどが変化したと考えられます。エンゲージメントサーベイとの違いエンゲージメントサーベイもパルスサーベイも、離職防止や社員の定着を目的とする点では同じですが、タイムスパンや調査方法などが異なります。目的に応じて使い分けると良いでしょう。項目パルスサーベイエンゲージメントサーベイ分析の目的社員のコンディション変化をタイムリーに把握する社員のコンディションを中長期的に把握する実施頻度高頻度(週次・隔週・月次など)低頻度(年1〜2回程度)設問数少ない(3〜10問程度)多い(20問以上が一般的)回答時間数分程度で完了10〜20分程度かかる詳細はエンゲージメントサーベイの解説記事をご覧ください。設問のフレームワークパルスサーベイ用のフレームワークはありませんが、エンゲージメントサーベイ用のフレームワークをカスタマイズしてパルスサーベイに流用することができます。ここでは有名なフレームワークをいくつかご紹介いたします。eNPS℠ベイン・アンド・カンパニー社が作成したフレームワークです。エンゲージメント=自分の会社を友人や家族に薦めたくなること と定義し、「自分の会社を薦めたいと思うか」という設問のみを調査します。この設問は0点「全く思わない」〜10点「非常にそう思う」の11段階となっており、点数が高い社員ほどエンゲージメントが高いと評価できます。この調査方法は設問数が少ないので従業員の回答ハードルが低く、頻繁に実施できることがメリットですが、仮に数値が低くても「なぜ薦めたいと思う人が少ないのか」の仮説が立てづらいことがデメリットです。Q12®ギャラップ社が作成したフレームワークです。エンゲージメントを「業務のやりがい」「人間関係」「キャリア成長」などに細分化し、合計12個の設問を調査します。1点「全く思わない」〜5点「非常にそう思う」の5段階となっており、点数が高い社員ほどエンゲージメントが高いと評価できます。(出典)【ギャラップ公式】たった12問であなたの職場の従業員エンゲージメント状態が分かる(Q12)eNPS℠に比べると設問が各領域で細分化されているため、「エンゲージメントが低い社員は人間関係に悩みを抱えている」などの分析がしやすいことがメリットですが、項目数が多い分回答ハードルが高く、頻繁に実施できないことはデメリットです。パルスサーベイに使うときは項目を減らしたほうが良いでしょう。Great Place To Work®Great Place to Work Instituteが作成したフレームワークです。エンゲージメント=働きがい(働きやすさ+やりがい) と定義していますが、項目の細分化や段階評価などはQ12と同様です。実施の流れ項目の設計パルスサーベイで調査したい内容に合わせて項目を設計します。ツールの比較検討・導入一般的に、パルスサーベイを行うときはサーベイツールを導入します。サーベイツールについては組織サーベイの解説記事をご覧ください。社員へのサーベイ案内・回答収集項目やツールの準備が整ったら、社員にサーベイへの回答を依頼します。回答結果やスコアの分析サーベイの回答が集まったら、過去に比べてスコアの変化した社員がいるか確認します。パルスサーベイの設問設計のポイント目的を具体的に決める社員の離職防止や定着のために、このサーベイで何を実現したいかを明確にしましょう。(例)離職リスクが高いセグメントを把握したい、離職リスクが高い社員をフォローしたい目的に応じて回答者の情報を集めるサーベイ実施側としては回答者の名前・部署・職種・入社年度などの情報を細かく集めたくなりますが、それだと自分が回答したとバレてしまうため、サーベイの回答率が低くなります。一方で、サーベイを完全な匿名制にすると、スコアが低い社員がいても誰か特定できずにフォローできないなどの弊害も生まれます。目的に応じて回答者の情報を集めるようにしましょう。(例)離職リスクが高い部署を把握したい→回答者の部署や職種、役職情報を収集する項目数と頻度を適切に設定するパルスサーベイは定期的に行うことでリアルタイムに社員の変化を検知できますが、項目数や頻度が多すぎると(50問を週1回など)社員の負担が増える上、社員が惰性で回答する恐れもあります。月1回の場合は10問、2週間に1回の場合は5問など項目数と頻度のバランスを取るようにしましょう。選択肢の尺度を適切に設定するサーベイでは「全く思わない」〜「非常にそう思う」の段階評価が多いですが、この尺度が多すぎると(10段階など)社員が回答しづらく、少なすぎると(3段階など)エンゲージメントに有意差があるのか分かりづらくなります。一般的には5段階前後が多いようです。項目や選択肢をなるべく統一するサーベイのたびに項目が変わると過去の回答結果との比較ができないため、変更は慎重に検討しましょう。自由記入欄も用意する選択式の設問だけでは分からない社員の意見や感想を拾えるためです。サーベイの回答率を上げるポイントサーベイの回答率を上げるために重要な要素は「納得感」「安心感」「手軽さ」の3つです。これらを満たすようにサーベイの回答を依頼しましょう。納得感を高めるサーベイへの回答を依頼するときは、その意義も伝えましょう。特に、回答することで社員にどのようなメリットがあるのかも伝えましょう。(例)サーベイを通じて社員の働きやすさが向上する、やりがいのある会社になる安心感を高める実名ありだと特定を恐れてネガティブな意見が出づらくなるので、匿名により本音を回答しやすくなります。ただし、匿名だとスコアが低い社員がいてもフォローはできないので注意しましょう。実名ありの場合、「回答内容は人事評価に影響しない」などのメッセージを伝えることも重要です。手軽さを高める回答の所要時間(「5分で終わります」など)を伝えたり、回答しやすいUIのサーベイツールを用意することが重要です。サーベイツール導入のポイントサーベイツールにも様々なものがあり、パルスサーベイに特化したもの他のサーベイ(モラールサーベイ、ストレスチェックなど)にも対応したものなどと種類があるため、どれが自社に適しているか比較検討が必要です。サーベイツールについては組織サーベイの解説記事をご覧ください。おすすめの記事人事データ分析について知りたい方は、タグ:人事データ分析のポイントをご覧ください。人事に関するシステムやツールについて知りたい方は、タグ:人事システム・ツールをご覧ください。