本記事では社員の定着や離職防止に悩む人事の方向けに、心理的安全性の測り方について解説いたします。心理的安全性とは心理的安全性の概要心理的安全性とは、人が組織の中で自分の意見などを安心して発言できる状態を指します。元々は組織行動学の専門家エイミー C.エドモンドソンが提唱した概念であり、Googleが「心理的安全性が高いチームは離職率が低く、仕事の生産性が高い」という研究を発表したことで注目を集めるようになりました。心理的安全性を測る目的前述の通り心理的安全性と離職には大きな関わりがあるため、心理的安全性を測ることで離職リスクの高い個人や組織を把握してフォローできます。心理的安全性の測り方心理的安全性を測る方法はいくつかありますが、ここでは主要なものを3つご紹介いたします。エンゲージメントサーベイ昨今では離職防止のためにエンゲージメントサーベイを行う企業が増えていますが、それを心理的安全性の調査に活用する方法です。サーベイの設問のうち、「上司との関係」「職場の雰囲気」「コミュニケーション」など心理的安全性に大きく関わる設問のスコアを分析します。ただし、設問が心理的安全性の調査に最適化されておらず、分析が難しいこともあります。心理的安全性のサーベイ心理的安全性を調査するために新規でサーベイを行う方法です。心理的安全性の調査に最適化された設問を用意できるので、上の方法に比べると調査や分析の精度は高まるのがメリットですが、サーベイ実施の負担が増えるのがデメリットです。まずはエンゲージメントサーベイで心理的安全性を分析し、それが難しければ新規でサーベイを行うと良いでしょう。1on1ミーティング上司と部下で1on1を行い、社員の心理的安全性を把握する方法です。サーベイに比べて手軽に始められるのがメリットですが、部下が上司に対して本音を話すとは限らない点、心理的安全性の測り方が主観的・定性的になりやすい点がデメリットです。心理的安全性を測るポイント(個人)以下ではエンゲージメントスコアで心理的安全性を分析することを前提とします。平均・中央値と乖離している社員を調べる組織(部署・役職・等級・年代など)のスコアと各社員のそれを比較します。もし組織よりもスコアを大きく下回る社員がいた場合、その社員は心理的安全性が低いと考えられます。(例)営業部は平均70点なのに、営業部の社員Aは50点簡単なのはセグメントの平均値や中央値を見ることですが、スコアの偏りによってはそれらが実態を表していないこともあります。偏りを調べるためには標準偏差やz-スコアが有効です。時系列の変化を調べる直近でスコアが大きく変化した社員がいた場合、その社員の心理的安全性が下がっていると考えられます。(例)営業部のAは3ヶ月前が70点だったのに1ヶ月前に50点に下がった設問ごとのスコア変化の傾向を調べる直近でスコアが大きく変化した社員がいた場合、どの設問のスコアが下がったのかを見る必要があります。(例)「上司との関係」が下がったのに他の設問が横ばいの場合、上司との関係が悪化して心理的安全性が下がっている心理的安全性を測るポイント(組織)いずれも分析の要領は個人と同じです。平均・中央値と乖離している組織を調べる組織の場合は各組織と全社のスコアを比較します。(例)全社は平均70点なのに、人事部は平均50点時系列の変化を調べる直近でスコアが大きく変化した組織があった場合、そこの心理的安全性が下がっていると考えられます。(例)人事部の平均点は3ヶ月前は65点だったのに1ヶ月前に50点に下がった設問ごとのスコア変化の傾向を調べる直近でスコアが大きく変化した組織があった場合、どの設問のスコアが下がったのかを見る必要があります。(例)「上司との関係」が下がったのに他の設問が横ばいの場合、上司との関係が悪化して心理的安全性が下がっている心理的安全性を高めるステップスコアの変化に対する仮説を立てる上で見つけたスコアの変化がなぜ起きているかの仮説を立てます。データだけを見ても仮説が立てづらい場合、360度評価・サーベイの回答内容などの定性情報を調べたり社員にヒアリングするのも有効です。(例)職場の雰囲気のスコアは高いのに上司との関係のスコアだけ低い→上司とのコミュニケーションに問題ありアクションプランを考える仮説を踏まえて、それを解決するためのアクションを考えます。例えば、以下のようなアクションが考えられます。心理的安全性が低い原因の仮説アクション職場の人間関係の不仲・チームビルディング研修・1on1の導入・人員配置の変更上司のマネジメント不足マネジメント研修の実施職場のコミュニケーションがとりづらい・定例会議の設置・チャットツールの導入ただし、人事制度や組織の変更などを伴う大規模なアクションになるほど効果が出るまでに時間がかかります。アクションが現実的に実行可能か、解決までのスピードが見合っているかなども踏まえて検討しましょう。スコアの変化を時系列で見る上で決めたアクションを実施した後、スコアの変化を定点観測します。アクションから数値に反映されるまでタイムラグがあることが多いので、しばらく様子見が必要です。もし時間が経過しても数値が変化しない、またはわずかな変化しか見られない場合、仮説やアクションを見直しましょう。心理的安全性を測るときの課題スコアを色々な切り口で分析できないサーベイツールに搭載されている分析機能には色々な制約も存在します。例えば、「サーベイスコアの変化を時系列で確認する」「部署ごとのスコアを調べる」など基本的な分析は可能ですが、「等級や役職・年代ごとにスコアを見る」「スコアの変化値だけを見る」など軸や切り口を変えて分析するのは困難です。よって、スコアを細かく分析するためには、サーベイツールからデータをダウンロードするExcelで各データを突合するExcel上で集計やグラフ化を行うという工程を踏むことが多くなります。この1・2の作業を「前処理」などと呼びますが、データの種類や件数が増えるほど前処理の手間も大きくなります(一般的に、データ分析では8割の時間が前処理に費やされるとも言われています)。多くの指標の相関分析が大変相関分析を行う流れは以下の通りです。「ある指標とエンゲージメントの相関が強い」と仮説を立てるその指標とエンゲージメントの相関係数を調べる相関が強い指標が見つかるまで1〜2を繰り返すエンゲージメントと相関の強い指標がなかなか見つからない場合、相関分析を何度も行う必要があり大変です。人事特化のBIツールの紹介上記を踏まえて、エンゲージメントを分析する際にはBIツールを導入することがおすすめです。BIツールには色々な種類がありますが、人事データを分析する上では「汎用型」「人事特化型」の違いが重要です。汎用型とは人事データ以外(営業、マーケティングなど)の分析用途にも使えるBIツールであり、人事特化型とは人事データの分析に特化したBIツールです。様々なコストが小さく済むことから、エンゲージメント分析を行うためには人事特化型のBIツールを使うことをおすすめします。※汎用型・人事特化型について詳しく知りたい方は、人事データ分析におすすめのBIツールをご覧ください。人事特化型BIツールの中でも、クラウドワークスで開発しているHuman & Humanがおすすめです。Human & Humanの特徴は以下の通りです。設計コスト人事でよく使う色々なデータベースや計算式がデフォルトで用意されている。データの前処理コスト他の多くの人事システムとAPI連携している他、データクレンジングのサポートも用意。権限管理部署・職種・役職に合わせて各データの閲覧・編集権限を管理できる。学習コスト1クリックでデータのかけあわせができるので、データ分析に詳しくない人事でも簡単に操作可能相関分析散布図やヒートマップを使って簡単に分析できる。(例)データを時系列で分析できる他、指標をかけあわせた分析も1クリックで可能(例)ヒートマップで相関の強い指標を一目で把握できるHuman & Humanについて詳しく知りたい方は、機能や導入事例をご覧いただくか、以下よりお問い合わせお願いいたします。おすすめのデータ分析記事心理的安全性以外を分析したい方は、以下の記事もご覧ください。離職率労働生産性残業時間エンゲージメントスコア社員の健康状態ハイパフォーマー