本記事では組織サーベイの実施を検討している人事の方向けに、組織サーベイの概要やツール、よくある課題について解説いたします。組織サーベイとは組織サーベイの概要組織サーベイとは、企業が組織の課題を把握するために従業員に向けて行うアンケート調査です。組織サーベイの種類組織サーベイは基本的には従業員の定着、離職防止を目的として行われますが、手法によって調査内容や頻度は異なります。ここではよく使われる手法をいくつかご紹介いたします。サーベイの種類調査内容頻度設問数エンゲージメントサーベイ従業員と会社の繋がりの強さ少ない多いストレスチェック従業員のストレスや体調少ない多いパルスサーベイ同上多い少ないモラールサーベイ従業員の会社に対する満足度少ない多いモチベーションサーベイ従業員の仕事のやりがい少ない多いエンゲージメントサーベイ従業員と会社の繋がりの強さ(エンゲージメント)を調査する手法です。(設問例)企業理念への共感、仕事のやりがい、人間関係、現在のキャリアへの満足度ストレスチェック従業員が業務を通して抱えるストレスや体調不調を調査する手法です。(設問例)仕事の進め方、業務中の体調、人間関係、休暇取得なお、以前から50名以上の企業ではストレスチェックが義務付けられていましたが、今後は50名未満の中小も含め、全企業で義務付けられました。パルスサーベイ他のサーベイ手法が多くの設問を調査するのに対し、パルスサーベイは少ない設問の代わりに高頻度(毎週、毎月など)で調査する手法です。目的や設問内容はエンゲージメントサーベイやストレスチェックと同じですが、頻度が多いので回答内容の変化(従業員の不満が増えたなど)などを検知しやすいのが特徴です。モラールサーベイ従業員の会社に対する満足度や労働意欲(モラール)を調査する手法です。エンゲージメントサーベイに比べると仕事のやりがい以外も調査対象に含まれており、より広い意味で「会社に満足しているか」を調査することが目的です。(設問例)仕事のやりがい、人間関係、労働条件、給与、福利厚生モチベーションサーベイエンゲージメントサーベイが「会社と従業員の繋がり」を調査するのに対し、モチベーションサーベイでは従業員個人の「仕事のやりがい」「モチベーション」などを調査します。(設問例)仕事のやりがい、仕事の動機付け、今後のキャリア形成サーベイツールとはサーベイツールの種類サーベイツールは名前の通り組織サーベイを行うためのツールですが、サーベイツールには色々な種類があります。一体型元々サーベイ以外の用途(人事労務やタレントマネジメントなど)で開発されており、後からサーベイ機能が追加されたツールです。メリットはサーベイ以外の業務も1つのツールで完結できる点、サーベイ以外の人事データも一元管理しやすい点ですが、特化型に比べて高価になりやすいといったデメリットもあります。また、サーベイに特化したシステムではない分、特化型に比べて機能やできることに制約があることも多いです。特化型サーベイを実施するために開発されたツールです。その中でも特定のサーベイに特化したもの(エンゲージメントサーベイのみ対応など)と、幅広いサーベイに対応できるものがあります。メリットは一体型に比べて安価な点、サーベイの分析機能が豊富な点ですが、サーベイ以外の業務はカバーできないので別システムが必要になる点、サーベイ以外の人事データは別システムで管理されるのでそれらと組みあわせた分析が難しい点はデメリットです。一体型、特化型の特徴をまとめると以下の通りです。特徴一体型特化型価格高い安いサーベイの分析機能弱い強いサーベイ以外の業務対応可対応不可人事データの一元管理易しい難しいサーベイツールの料金体系具体的な金額は会社によって異なるので、ここでは一般的なサーベイツールの料金体系を説明いたします。初期費用システムの導入時のみ発生する費用です。主にアカウントの開設、カスタマーサクセスなどのコストを回収するためのものですが、金額としては小さいため、初期費用を無料にしている会社もあります。ランニングコスト支払いサイクルは月次、半年、年次など会社によって異なりますが、月次が一般的です。初期費用に比べて解約まで継続的に発生するので、企業が金額を比較する際はランニングコストを重視する必要があります。ランニングコストは主に従量課金制ですが、ユーザー数か利用機能に応じて料金が増えることが多いです(両方を取り入れているシステムもあります)。ユーザー数課金機能課金概要システムを利用するユーザー(=社員)の数に応じて金額が増える仕組みシステムで利用する機能に応じて金額が増える仕組みおすすめの企業・従業員数が少ない場合・一部の事業部だけでサーベイを行う場合・色々な機能を使いたい場合・従業員数が多い場合・全社でサーベイを行う場合・一部の機能だけを使いたい場合どちらがおすすめかはツールの運用の仕方によって異なります。例えば、従業員数が多い企業で全社的にサーベイを行う場合、ユーザー数が多いのでユーザー数課金よりも機能課金を選んだほうが安くなります。逆に、機能課金は多くの機能を使うほど割高になるので、色々な機能を使いたい場合はユーザー数課金のほうが良いでしょう。サーベイツールを導入するにはサーベイツール比較のポイント実現したい内容前述の通り、組織サーベイで実現できることは多岐に渡るため、「組織サーベイをやりたい」だけではどのツールが最適か比較することが困難です。「離職防止したい」「サーベイだけでなく社員のスキル管理もしたい」など、具体的に何を実現したいかを整理しましょう。権限管理人事データには個人情報が多数含まれており、個人情報保護の観点から取り扱いに注意する必要があります。そういったデータをサーベイツールで管理する場合、社員の所属や人事データの利用目的に応じてアクセス権限を調整する必要があります。(例)給与情報は人事部、管理職、経営陣だけが閲覧できるようにするそういった権限管理の機能を搭載しているかどうかを確認しましょう。※人事データの保護についてはプライバシー保護の解説記事をご覧ください。コスト前述の通りサーベイツールの多くは従量課金制ですが、単価は会社によって大きく異なります。安いに越したことはありませんが、安くて機能が少ないシステムを選んだ結果、要件を実現できなくなるのは本末転倒です。システムを利用するユーザー数や機能を想定してコストをシミュレーションし、要件と比べて金額が見合うかを検討しましょう。操作性機能が豊富でもUIが分かりづらかったり、動作が重くて使いづらいことがあります。多くのサーベイツールではトライアルを提供しているので、トライアルで操作性を確認しておきましょう。カスタマーサポート多くのサーベイツールでは導入後にカスタマーサポートへの問い合わせなどができますが、それ以外のサポートを用意していることもあります。どのようなサポートがあるかは確認しておきましょう。(例)カスタマーサクセス担当者が付き、運用が立ち上がるまで伴走してくれるFAQやユーザーコミュニティが用意されており、疑問点を解消しやすいサーベイツール導入時の注意点どのシステムを導入する際でも共通して注意すべき点を解説いたします。人事システムや人事データへの影響の整理別の人事システムを運用しているところにサーベイツールを導入すると、人事データが分散したり運用が混乱する恐れがあります。よって、導入による人事システムや人事データへの影響を理解しておく必要があります。導入前導入後各業務がどの人事システムで動いているかどの業務がサーベイツールに置き換わるか各人事データがどの人事システムで管理されているかどの人事データがサーベイツールで管理されるかシステム間がどのように連携しているかサーベイツールと既存システムがどのように連携するかサーベイツールの導入ステップ要件を整理する実現したいこと、コスト、他システムとの連携など求める要件を整理します。サーベイツールを選定する要件を元にシステムをいくつか選定&トライアルし、どれにするかを検討します。サーベイツールを構築する導入するシステムが決定したら、ツールの契約手続きや設定作業既存の人事システムからのデータ移行他システムとのAPI連携などの開発を開始します。ツール周りの作業は運営会社が支援してくれますが、人事システムとの連携などは自社で対応することが多く、情報システム部やIT部門と連携して開発を進めます。構築が完了したら受け入れテストを行い、人事業務やデータ分析が問題無く行えるかを確認します。リリーステストが完了したらサーベイツールをリリースし、本番運用を開始します。サーベイツールによくある課題サーベイを色々な切り口で分析できないサーベイツールに搭載されている分析機能には色々な制約も存在します。例えば、「サーベイスコアの変化を時系列で確認する」「部署ごとのスコアを調べる」など基本的な分析は可能ですが、「離職者に絞ってスコアを見る」「等級や役職・年代ごとにスコアを見る」など、軸や切り口を変えて分析するのは困難です。サーベイ以外の人事データとかけあわせた分析が難しい特化型のサーベイツールを導入する企業が増えていますが、特化型ではサーベイ以外の人事データを管理できないため、サーベイと人事データをかけあわせた分析はできません。もしそれをやりたい場合(例えばサーベイスコアと離職率の相関を分析したい)場合、双方のシステムからデータをダウンロードするExcel上でデータを突合するデータを分析するという工程を踏むことが多くなります。この1・2の作業を「前処理」などと呼びますが、データの種類や件数が増えるほど前処理の手間も大きくなります(一般的に、データ分析では8割の時間が前処理に費やされるとも言われています)。一体型であれば他の人事データも一元管理されていますが、前述の通りサーベイ機能があまり強くないので相関分析などができず、結局Excelで分析をすることが多くなります。人事特化のBIツールの紹介こうした事情から、人事データの分析を行いたい場合はBIツールを活用するシーンが増えています。Excelでの課題BIツールのメリット分析内容に応じてグラフやレポートを作り変えるのが大変(例)散布図、ヒートマップ、ヒストグラム、箱ひげ図分析でよく使うグラフを簡単に作成できるクラスター分析など高度な分析になるほどExcelで行うのが大変色々な分析機能が用意されている(例)時系列分析、相関分析、クラスター分析、回帰分析関数やマクロを作り込むほど属人化が進むレポートやダッシュボードがあれば誰でも分析ができるサーベイツールの課題BIツールのメリットデータの前処理が大変API連携などによりデータの前処理が簡単高度な分析に対応できない(例)相関分析、クラスター分析、回帰分析色々な分析機能が用意されている一方、BIツールはデータを活用した戦略人事など各種施策への意思決定には有効ですが、年末調整や各種申請フローの管理など人事労務業務を行うことには適していません。自社のやりたいことに合わせてどちらを導入するか決めましょう。※BIツールについて詳しく知りたい方は、人事データ分析におすすめのBIツールをご覧ください。BIツールを使う場合、クラウドワークスで開発しているHuman & Humanがおすすめです。Human & Humanの特徴は以下の通りです。設計コスト人事でよく使う色々なデータベースや計算式がデフォルトで用意されている。データの集計コスト他の多くの人事システムとAPI連携している他、データクレンジングのサポートも用意。権限管理部署・職種・役職に合わせて各データの閲覧・編集権限を管理できる。学習コスト1クリックでデータのかけあわせができるので、データ分析に詳しくない人事でも簡単に操作可能相関分析散布図やヒートマップを使って簡単に分析できる。(例)データを時系列で分析できる他、指標をかけあわせた分析も1クリックで可能(例)ヒートマップで相関の強い指標を一目で把握できるHuman & Humanについて詳しく知りたい方は、機能や導入事例をご覧いただくか、以下よりお問い合わせお願いいたします。