本記事では人事や組織のあり方にお悩みの企業向けに、人的資本経営について解説いたします。貴社の人的資本経営の課題や改善点をアドバイスしてくれる「人的資本経営実践チェックシート」もありますので、そちらもご活用ください。人的資本経営とは概要人的資本経営とは、従業員を価値創造の源泉である「資本」として捉え、人材への投資を通じて中長期的な企業価値の向上を図る経営の考え方です。メリット人的資本経営を推進することは企業・社員双方にメリットがあります。企業のメリット社員のメリット中長期的な企業価値が向上するスキル開発・学習機会が拡充され、キャリア形成がしやすくなる従業員エンゲージメント向上により生産性・業績が改善する働きがい・モチベーションが向上する人材データの可視化により戦略的な人材配置・育成が可能になる適材適所の配置により能力を発揮しやすくなるイノベーション創出力が高まり競争優位性を確保できる多様な価値観や強みが尊重される職場環境が実現する離職率低下・採用力強化につながる雇用の安定性・心理的安全性が高まる人的資本情報開示により投資家・市場からの評価が向上する透明性の高い経営により企業への信頼感が高まるESG・サステナビリティ経営の推進に寄与する持続可能な社会・働き方の実現に貢献できる人的資本の歴史人的資本という概念は、1800年台にアダム・スミスが『国富論』で提唱したことが起源とされています。1960年代にゲーリー・ベッカーなどの経済学者が人的資本に関する研究を進めました。このように人的資本の歴史は古いのですが、欧米では近年に本格的な取り組みが始まりました。2018年にISO30414(人的資本に関する情報開示のガイドライン)策定2022年に米国証券取引委員会(SEC)が上場企業への人的資本の情報開示を義務化こうした海外の動きを受けて、日本で注目されるようになったのは2022年頃からです。2022年に内閣官房が人的資本可視化指針を公表2022年に経済産業省が人的資本経営の実現に向けた検討会報告書(通称「人材版伊藤レポート2.0」)を公表2023年に政府が大手企業に対して人的資本開示が義務化などの動きがあり、人的資本経営が注目されました。注目される背景前述の通り、日本で人的資本経営が注目された直接的な背景は政府による後押しですが、そこには様々な社会構造の変化があります。ESG投資の拡大により、投資家が人的資本を企業価値評価に組み込むようになった少子高齢化・労働人口減少が現実問題となり、人材確保・定着が経営課題となった終身雇用・年功序列など従来の雇用モデルの限界が顕在化DX・事業構造転換の進展により、リスキリングや人材再配置の必要性が急増企業価値の源泉が有形資産から無形資産(人材・知識)へ移行人的資本開示との違い人的資本開示は人的資本経営の一部であり、企業が人的資本経営の取り組みをステークホルダーに対して開示することです。2023年から上場企業への人的資本開示が義務付けられたことから、人的資本開示のみを行って満足している企業も多いのですが、ゴールはあくまで人的資本経営の実現であり、開示はその一部にすぎないことは要注意です。※人的資本開示については解説記事をご覧ください。戦略人事との違い戦略人事とは、経営戦略・事業戦略と紐付けた人事のあり方を意味します。従来の人事が管理・オペレーション業務などの「守り」中心であったのに対し、人事が経営や事業と連携して価値を創出する「攻め」の要素が強いことが特徴です。人的資本経営と戦略人事は組織のあり方を表す思想という点では同じですが、視点がやや異なります。観点人的資本経営戦略人事立場経営人事位置づけ経営戦略の中核経営戦略の実行手段対象人材投資・価値創造全体人事制度・運用ゴール企業価値の最大化事業戦略の実現説明責任社外(投資家等)社内(経営・現場)※戦略人事については解説記事をご覧ください。人的資本経営の課題人的資本経営コンソーシアムが2024年に発表した「人的資本経営の現状・課題と トップランナーたちの取組」によると、多くの企業が人的資本経営を推進する上で抱える課題は以下の3つです。取締役会の役割人的資本経営を進める上で取締役会の役割を明確化し、対応策の議論や振り返りができていないKPI設定・現状とのギャップ把握経営戦略に沿ったKPIを設定し、現状とのギャップを把握し、実際の成果創出にまで繋げられていない人事部門のケイパビリティ人事部門の企画機能が不足している人的資本経営を推進するポイントHRBPの設置人的資本経営を推進しようとして失敗する原因の多くは、HRBPなどの人的資本経営を推進する責任者の不在です。従来の人事はバックオフィスやオペレーションを担当していた人が多く、人事データの活用やシステムに長けた人が少ないからです。オペレーションが得意な人をHRBPにアサインしても育つのに時間がかかりますし、そもそもHRBPに向いておらず十分に機能しないこともあります。こういうときはHRBPを任せられる人材を新規採用するか、事業部からHRBPを抜擢すると良いでしょう。両者メリット、デメリットがあるので、自社の採用や組織の状況を踏まえて判断しましょう。※HRBPについてはHRBPの解説記事をご覧ください。人的資本の可視化人的資本経営を推進するためには、社内の人的資本をデータで把握する必要があります。例えば以下のようなものです。分類可視化すべき主な人的資本人材の量・構成従業員数(正規/非正規、国内/海外)、年齢構成、勤続年数、職種別・部門別人員、管理職比率、キーポジション人材数、後継者カバレッジ率人材の質・能力保有スキル・資格、専門性・デジタルスキル、スキルギャップ、経験年数、異動・海外経験、ハイパフォーマー比率、リーダーシップ能力人材獲得・配置採用数・採用充足率、採用コスト、採用リードタイム、内部異動率、ジョブローテーション率、適所配置率人材育成・能力開発教育投資額(一人当たり)、研修受講時間、リスキリング実施率、育成プログラム修了率、昇格・昇進率評価・報酬・定着評価分布・評価納得度、報酬水準(市場比較)、離職率、定着率、平均在籍年数、重要人材の離職率エンゲージメント・組織文化エンゲージメントスコア、従業員満足度、心理的安全性、上司への信頼度、組織風土指標多様性・DE&I女性・外国人・障がい者比率、女性管理職比率、男女賃金格差、多様な人材の登用状況健康・ウェルビーイング健康診断受診率、ストレスチェック結果、欠勤率、労働時間、有給取得率、労災発生率ただし、闇雲にデータだけを把握しても活用できなければ意味がありません。「自社の経営戦略や人事戦略に紐付くデータかどうか」を意識しましょう。人事データ基盤の整理人的資本を可視化するためには人事データの整備が不可欠ですが、人事データには様々なものが存在し、それらは別々のシステムに分散していることがほとんどです。人事データデータを管理するシステム社員情報タレントマネジメントシステム勤怠情報勤怠管理システム給与情報人事労務システムエンゲージメントスコアサーベイツールetc.そこで、人事データを集約した人事マスタを構築することが重要です。各データがどのシステムで管理されているかどのシステム間のデータが連携しているかなど現状(As Is)を把握した後、人事マスタを構築してどのようなシステム管理・連携を目指すのか(To Be)を整理します。人事マスタが存在しない場合、各システムから人事データをダウンロードするデータを1つに突合するデータを分析すると分析までに時間がかかります。※人事マスタについては人事マスタの解説記事をご覧ください。Human & Human人事のオペレーション業務の中でも大きな時間を割くのが人事データの集計・管理(Excelの整形など)ですが、そういった課題を解決するのが、Human & Humanというクラウドワークスで開発している人事特化型BIツールです。Human & Humanの特徴は以下の通りです。設計コスト人事でよく使う色々なデータベースや計算式がデフォルトで用意されている。データの前処理コスト他の多くの人事システムとAPI連携している他、データクレンジングのサポートも用意。権限管理部署・職種・役職に合わせて各データの閲覧・編集権限を管理できる。学習コスト1クリックでデータのかけあわせができるので、データ分析に詳しくない人事でも簡単に操作可能相関分析散布図やヒートマップを使って簡単に分析できる。多くの企業・人事で時間をかけている人事データの整形・集計などの業務を大幅に削減し、余ったリソースを戦略人事などに振り分けることができます。Human & Humanについて詳しく知りたい方は、機能や導入事例をご覧いただくか、以下よりお問い合わせお願いいたします。おまけ:人的資本経営実践チェックシート弊社で定義した「人的資本経営の理想像」に沿って、企業が人的資本経営をどれぐらい実践できているかを診断できます。弊社で「人的資本経営の理想像」を4カテゴリに分類しました。シートでは1カテゴリごとに5問、合計20個のチェック項目を用意しています。全項目に回答すると、カテゴリごとに現在の人的資本経営の課題や改善点をアドバイスしてくれます。おまけ:戦略人事実践チェックシート戦略人事と一口に言ってもその領域が多岐に渡るため、「戦略人事とは何をすれば良いか分からない」という企業が増えています。また、「戦略人事」を客観的に測る尺度が存在しないため、「自社の戦略人事がどれぐらいのレベルか分からない」ということもあります。このチェックシートは、弊社で定義した「戦略人事の理想像」に沿って、企業が戦略人事をどれぐらい実践できているかを診断できます。