本記事ではエンゲージメントサーベイの実施を検討している企業向けに、サーベイの概要や設問設計のポイントについて解説いたします。※サーベイ実施後のエンゲージメント分析については、エンゲージメント分析の解説記事をご覧ください。エンゲージメントとは概要エンゲージメントとは、社員と会社の繋がりの強さ(会社に対する愛着、従業員体験の向上など)を意味する概念です。注目される背景労働人口の減少や働き方改革などを背景に、離職防止や業務効率化に取り組む企業が増えています。そして、実はエンゲージメントが高い社員ほど離職率が低く、労働生産性や営業利益率が高くなりやすいという相関が見られます。(参考)「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果を公開離職防止や業務効率化のために社員のエンゲージメント向上が注目を集めていると言えます。従業員満足度との違いエンゲージメントと従業員満足度は似ていますが、以下の点が異なります。エンゲージメント従業員満足度意味社員・会社の相互の繋がり社員から会社への一方向の満足度構成要素「働きやすさ」「やりがい」「成長実感」などのモチベーション要素が重視されるモチベーション以外の要素(福利厚生・賃金など)も重視されるエンゲージメントサーベイとは概要エンゲージメントサーベイとは、社員が会社に対して抱くエンゲージメントを定量的に調査する手法です。目的エンゲージメントサーベイは離職防止や社員の定着を目的としますが、具体的には以下のように使われることが多いです。エンゲージメントが低い社員や部署をフォローする(面談・管理職への改善指示など)エンゲージメントが低い原因を分析し、改善のアクションを行う設問のフレームワークエンゲージメントサーベイでの調査項目は実施企業が自由に設定できますが、既存のフレームワークを使ったり、それをカスタマイズしたほうが効率的です。ここでは有名なフレームワークをいくつかご紹介いたします。eNPS℠ベイン・アンド・カンパニー社が作成したフレームワークです。エンゲージメント=自分の会社を友人や家族に薦めたくなること と定義し、「自分の会社を薦めたいと思うか」という設問のみを調査します。この設問は0点「全く思わない」〜10点「非常にそう思う」の11段階となっており、点数が高い社員ほどエンゲージメントが高いと評価できます。この調査方法は設問数が少ないので従業員の回答ハードルが低く、頻繁に実施できることがメリットですが、仮に数値が低くても「なぜ薦めたいと思う人が少ないのか」の仮説が立てづらいことがデメリットです。Q12®ギャラップ社が作成したフレームワークです。エンゲージメントを「業務のやりがい」「人間関係」「キャリア成長」などに細分化し、合計12個の設問を調査します。1点「全く思わない」〜5点「非常にそう思う」の5段階となっており、点数が高い社員ほどエンゲージメントが高いと評価できます。(出典)【ギャラップ公式】たった12問であなたの職場の従業員エンゲージメント状態が分かる(Q12)eNPS℠に比べるとエンゲージメントが各領域で細分化されているため、「エンゲージメントが低い社員は人間関係に悩みを抱えている」などの分析がしやすいことがメリットですが、項目数が多い分回答ハードルが高く、頻繁に実施できないことはデメリットです。Great Place To Work®Great Place to Work Instituteが作成したフレームワークです。エンゲージメント=働きがい(働きやすさ+やりがい) と定義していますが、項目の細分化や段階評価などはQ12と同様です。実施の流れ項目の設計エンゲージメントサーベイで調査したい内容に合わせて項目を設計します。ツールの比較検討・導入一般的に、エンゲージメントサーベイを行うときはサーベイツールを導入します。サーベイツールについては組織サーベイの解説記事をご覧ください。社員へのサーベイ案内・回答収集項目やツールの準備が整ったら、社員にサーベイへの回答を依頼します。回答結果やスコアの分析サーベイの回答が集まったら、回答内容を分析します。分析のポイントについてはエンゲージメント分析の解説記事をご覧ください。エンゲージメントサーベイの設問設計のポイント目的を具体的に決める社員の離職防止や定着のために、このサーベイで何を実現したいかを明確にしましょう。(例)離職リスクが高いセグメントを把握したい、離職リスクが高い社員をフォローしたい目的に応じて回答者の情報を集めるサーベイ実施側としては回答者の名前・部署・職種・入社年度などの情報を細かく集めたくなりますが、それだと自分が回答したとバレてしまうため、サーベイの回答率が低くなります。一方で、サーベイを完全な匿名制にすると、エンゲージメントが低い社員がいても誰か特定できずにフォローできないなどの弊害も生まれます。目的に応じて回答者の情報を集めるようにしましょう。(例)離職リスクが高い部署を把握したい→回答者の部署や職種、役職情報を収集する項目数と頻度を適切に設定するサーベイでは設問数が多いほど回答の精度は上がりますが、回答に時間がかかるので社員の負担が増えます。月1回など頻繁に実施するときは10〜15問、年1回などで大規模に実施するときは40〜50問と使い分けると良いでしょう。選択肢の尺度を適切に設定するサーベイでは「全く思わない」〜「非常にそう思う」の段階評価が多いですが、この尺度が多すぎると(10段階など)社員が回答しづらく、少なすぎると(3段階など)エンゲージメントに有意差があるのか分かりづらくなります。一般的には5段階前後が多いようです。項目や選択肢をなるべく統一するサーベイのたびに項目が変わると過去の回答結果との比較ができないため、変更は慎重に検討しましょう。自由記入欄も用意する選択式の設問だけでは分からない社員の意見や感想を拾えるためです。サーベイの回答率を上げるポイントサーベイの回答率を上げるために重要な要素は「納得感」「安心感」「手軽さ」の3つです。これらを満たすようにサーベイの回答を依頼しましょう。納得感を高めるサーベイへの回答を依頼するときは、その意義も伝えましょう。特に、回答することで社員にどのようなメリットがあるのかも伝えましょう。(例)サーベイを通じて社員の働きやすさが向上する、やりがいのある会社になる安心感を高める実名ありだと特定を恐れてネガティブな意見が出づらくなるので、匿名により本音を回答しやすくなります。ただし、匿名だとエンゲージメントが低い社員がいてもフォローはできないので注意しましょう。実名ありの場合、「回答内容は人事評価に影響しない」などのメッセージを伝えることも重要です。手軽さを高める回答の所要時間(「5分で終わります」など)を伝えたり、回答しやすいUIのサーベイツールを用意することが重要です。エンゲージメントサーベイツール導入のポイントエンゲージメントサーベイツールにも様々なものがあり、エンゲージメントサーベイに特化したもの他のサーベイ(モラールサーベイ、ストレスチェックなど)にも対応したものなどと種類があるため、どれが自社に適しているか比較検討が必要です。サーベイツールについては組織サーベイの解説記事をご覧ください。おまけ:エンゲージメントサーベイ活用チェックシート弊社で「エンゲージメントサーベイの活用の理想像」を5カテゴリに分類しました。シートでは1カテゴリごとに5問、合計25個のチェック項目を用意しています。全項目に回答すると、カテゴリごとに現在のエンゲージメント活用の課題や改善点をアドバイスしてくれます。チェックシートをダウンロードする