従業員の離職防止や生産性向上などの目的でエンゲージメントサーベイを実施している企業は多いですが、「エンゲージメントスコアの活用方法が分からない」「エンゲージメント分析ができない」という悩みが増えています。本記事ではエンゲージメント分析のポイントについて解説します。※人事データ活用の基本を知りたい方は人事データ活用にありがちな悩みを解決! 人事データの種類や分析のポイントも合わせてご覧ください。エンゲージメントサーベイによくある悩みエンゲージメントサーベイを実施するときの悩みは以下の3つに大別されるかと思います。①サーベイの設計(例)・どのような目的でサーベイを実施すべきか分からない・設問の作り方が分からない・従業員への説明の仕方が難しい②サーベイツールの選定(例)・どのツールを選べば良いか分からない・ツールごとの機能の違いが分からない③エンゲージメントスコアの分析方法(例)・スコアの変化からどのようなインサイトを読み取れるのか分からない・サーベイツールの分析機能だけでは深く分析しきれない・スコアをExcelで集計しようとすると手作業が大変この記事では③を中心に解説します。エンゲージメント分析の対象エンゲージメント分析では「個人に対する分析」「組織に対する分析」の2種類があります。前者はスコアが低い社員を把握する方法であり、後者はスコアが低いセグメント(部門・役職・職種など)を把握する方法です。どちらもスコアが低いものを特定してフォローや人事施策を行うのは同じですが、それぞれにメリット・デメリットがあるため、上手く使い分けましょう。個人に対する分析組織に対する分析分析対象特定の社員特定のセグメント(部門・役職・職種など)フォロー例社員への個別対応(社員との面談、メンタルケア、人事異動など)・管理職や事業責任者への個別対応(研修、面談など)・セグメント全体に対する対応(研修、チームビルディングなど)メリット・社員にパーソナライズした対応ができる・効果が出るのが早い・個別対応よりも工数が少ない・会社や組織全体へのインパクトは大きいデメリット・社員数が増えるほど工数が増える・会社や組織全体へのインパクトは小さい・社員一人ひとりにパーソナライズした対応は難しい・効果が出るのに時間がかかるエンゲージメントスコアの判断基準エンゲージメントスコアが高いか低いかの判断基準には、いくつかの考え方があります(以下、いずれも100点満点と想定)。絶対評価(例)社員Aは60点であり、閾値の80点より低いのでスコアが低い相対評価(例)社員Aは60点であり、社内の平均値(または中央値)70点より低いのでスコアが低い時系列での変化(例)社員Aは3ヶ月前は80点だったが、今月は60点なのでスコアが下がったサーベイを何度も実施し、離職リスクなどが上がる閾値を発見できている場合は絶対評価も有効ですが、そうでなければ相対評価や時系列での変化を中心に判断すると良いでしょう。エンゲージメント分析のステップ①人事データとの相関を調べるエンゲージメントスコアと人事データ(離職率、残業時間、労働生産性、等級滞留年数など)を紐付けることで、スコアの上下によりどういう影響があるか、どの指標が変化するかなどを把握し、仮説を立てることができます。(例)エンゲージメントスコアと人事データとの相関仮説エンゲージメントスコアが低い社員ほど離職率が高い社員が会社に在籍する意義を感じられていないエンゲージメントスコアが低い社員ほど労働生産性が高い業務に対する内発的動機付けが弱く、業務効率が低いエンゲージメントスコアが低い社員ほど等級滞留年数が長い業務のやりがいや会社への愛着が低く、出世意欲が弱い↑残業時間とスコアの相関が弱いことが分かる。なお、サーベイの設問・スコアが複数ある(Q12や自社オリジナルの設問など)場合は、設問と指標の相関を個々に調べる必要があります。例えば、エンゲージメントサーベイの1つ「Q12」では私は仕事の上で、自分が何を期待されているかがわかっている。私は自分がきちんと仕事をするために必要なリソースや設備を持っている。私は仕事をする上で、自分の最も得意なことをする機会が毎日ある。etc.と設問が12個用意されているので、設問ごとに相関を調べましょう。設問が多くて調べるのが大変なら、一部の設問をチョイスするか、設問をカテゴライズするのも有効です。(例)Q12と人事データとの相関仮説「キャリア」の設問と離職率が相関が強いが、「人間関係」の設問とは相関が弱い会社の人間関係には問題が無いが、キャリア形成に不安を感じている「成長」の設問と離職率が相関が強いが、「人間関係」の設問とも相関が強い仕事を通じて成長実感を感じられず、会社の人間関係も悪い↑設問を「やりがい」「自己成長」「健康」などにカテゴライズ。②セグメントごとに相関を調べる①で発見したエンゲージメントスコアと相関の強いデータをセグメントごとに細かく把握します。スコアが他に比べて低く、相関が強いセグメントのほうが改善インパクトが大きいため、優先的に対策する必要があります。セグメントとしては社員の基本情報(性別、部署、役職、等級、職種、入社年度など)が有効です。↑部署ごとのエンゲージメントスコアの推移。社長室のスコアが特に低い。③原因に対する仮説を立てる②で見つけた相関がなぜ起きているかの仮説を立てます。データだけを見ても仮説が立てづらい場合、360度評価・サーベイの回答内容などの定性情報を調べたり社員にヒアリングするのも有効です。④アクションプランを考える③の仮説を踏まえて、それを解決するためのアクションを考えます。例えば、以下のようなアクションが考えられます。(例)エンゲージメントスコアが低い原因の仮説アクション長時間労働による疲弊・業務効率化のツール導入・業務フローや業務内容の見直し・人員の追加職場の人間関係の不仲・チームビルディング研修・1on1の導入・人員配置の変更給与に対する不満・給与制度の見直し・ストックオプションの発行今後のキャリアに対する不安・キャリア研修・副業の奨励・ジョブローテーションの導入ただし、人事制度や組織の変更などを伴う大規模なアクションになるほど効果が出るまでに時間がかかります。アクションが現実的に実行可能か、解決までのスピードが見合っているかなども踏まえて検討しましょう。⑤スコアと人事データの変化を時系列で見る④で決めたアクションを実施した後、スコアや相関の強いデータの変化を定点観測します。アクションから数値に反映されるまでタイムラグがあることが多いので、しばらく様子見が必要です。もし時間が経過しても数値が変化しない、またはわずかな変化しか見られない場合、③の原因の仮説や④のアクションを見直しましょう。①〜⑤の例Q12でエンゲージメントサーベイを行い人事データとの相関分析を行った結果、以下の結果を確認できた・成長に関する設問のスコアと離職率は逆相関が弱い・他の項目のスコアと離職率は相関が弱い・特に人間関係に関する設問のスコアは全体的に高く、離職率との相関が弱いセグメントごとに調べた結果、以下の結果を確認できた・営業部で3年以内入社の社員は成長の設問スコアが特に低く、離職率との逆相関が強い ・他の項目、特に人間関係のスコアと離職率は相関が弱い上記の結果から、以下の仮説を立てた・営業部の人間関係などは良好である・しかし若手に成長やスキルアップの実感が薄く、キャリア形成の見通しを立てられていない・それにより若手の早期離職が多発している以下のアクションプランを立てて実行した・営業部の若手向けのスキル研修・今後のキャリアプラン形成のための研修営業部の若手の離職率を定期的(3ヶ月後、6ヶ月後など)に調べ、スコアや離職率の変化を確認するエンゲージメント分析の課題サーベイツールで相関分析ができない多くのサーベイツールではスコアをセグメント(部署、職種、入社年度など)ごとに集計したり、スコアを時系列(1年前、半年前、現在など)で把握する機能は搭載されていますが、上記のような相関分析を行う機能はありません。他の人事システムとAPI連携しているサーベイツールもありますが、人事データの自動連携や集計だけにとどまることが多いです。データの前処理が大変よって、スコアと人事データの相関分析を行うためには、サーベイツールや他の人事システムからデータをダウンロードするExcelで各データを突合するExcel上で集計やグラフ化を行うという工程を踏むことが多くなります。この1・2の作業を「前処理」などと呼びますが、データの種類や件数が増えるほど前処理の手間も大きくなります(一般的に、データ分析では8割の時間が前処理に費やされるとも言われています)。BIツールの比較汎用型と人事特化型上記を踏まえて、エンゲージメントを分析する際にはBIツールを導入することがおすすめです。BIツールには色々な種類がありますが、人事データを分析する上では「汎用型」「人事特化型」の違いが重要です。汎用型とは人事データ以外(営業、マーケティングなど)の分析用途にも使えるBIツールであり、人事特化型とは人事データの分析に特化したBIツールです。汎用型と人事特化型の違いを以下にまとめました。汎用型人事特化型設計コスト大小データの前処理コスト大小学習コスト大小柔軟な権限管理難易様々なコストが小さく済むことから、エンゲージメント分析を行うためには人事特化型のBIツールを使うことをおすすめします。※汎用型・人事特化型について詳しく知りたい方は、人事データ分析におすすめのBIツールをご覧ください。Human & Humanここからはクラウドワークスで開発している人事特化型BIツールのHuman & Humanをご紹介させていただきます。人事でよく使う色々なデータベースや計算式がデフォルトで用意されているため、設計コストやデータのコストを小さく抑えることができます。また、他の多くの人事システムとAPI連携している他、データクレンジングのサポートもしてくれるため、データ分析の8割とも言われる前処理コストを大きく削減できます。1クリックで色々な軸でデータを分析でき、複数軸のかけあわせもできます。(例)部署別×男女別の離職率散布図やヒートマップを使って複数の人事データの相関を調べることもできます。(例)残業時間と離職率の相関また、取り込んだ人事データを元に、人的資本開示の項目を自動集計してくれます。特にエンゲージメントスコアについてはスコアの時系列での把握様々なセグメント(部署、役職、等級など)での分析他の人事データとの相関分析などのレポート、グラフが標準で用意されており、簡単に分析できます。Human & Humanについて詳しく知りたい方は、以下より資料請求・トライアル申込お願いいたします。