「人事データを元に組織を分析したい」「データを活用して人事施策を企画したい」というニーズが増えていますが、そのためには人事マスタ(人事データベース)の構築が必要です。本記事では人事マスタの構築のポイントやツール比較について解説します。※人事データ活用の基本を知りたい方は人事データ活用にありがちな悩みを解決! 人事データの種類や分析のポイントも合わせてご覧ください。人事マスタの概要一口に人事データと言っても様々なデータが存在しており、それぞれ別のシステムで管理されています(社員情報はタレントマネジメントシステム、勤怠情報は勤怠管理システム、申請情報はワークフローシステムなど)。人事データには以下のようなものがあります。社員の基本情報勤怠情報人事評価情報入退社情報スキル情報サーベイ情報※人事データの種類を詳しく知りたい方は人事データ活用にありがちな悩みを解決! 人事データの種類や分析のポイントも合わせてご覧ください。また、部署や事業部ごとにデータやシステムが異なることもあります。それらのデータを1つのシステムに集約したものが人事マスタ(人事基盤、人事データベース)です。人事マスタ構築のメリット人事データの分析工数を減らせる人事マスタが存在しない場合、データが様々なシステムに分散しているため、各システムから人事データをダウンロードするデータを1つに突合するデータを分析すると分析までに時間がかかります。組織を横断してデータを分析できる部署や事業部ごとにデータが分散していると、組織を横断した分析や意思決定がしづらくなります。(例)・部署ごとの比較分析(残業時間、離職率など)・部署をまたいだ人員配置の検討人事マスタ構築のステップ①現状(As Is)と目標(To Be)を整理する前述の通り、人事データには様々なものが存在しており、それらは別システムで管理されていることがほとんどです。よって、各データがどのシステムで管理されているかどのシステム間のデータが連携しているかなど現状(As Is)を把握する必要があります。その上で、人事マスタを構築してどのようなシステム管理・連携を目指すのか(To Be)を整理します。例えば、Sansanでは「欲しいデータがどこにあるか分からない」「そもそもそのデータが存在するかどうかすら分からない」という課題が起きていたので、人事マスタ統合時にAs Is、To Beのシステム構成図を作成されたそうです。出典:現場の作業を増やし続ける「人事データの分散と分断」、Sansanはどう解決したのか──CIOの本山祐希氏に聞く「人事マスタ統合」のプロセス②人事マスタの構築ツールを選定する上記のTo Beの要件に合わせてツールを選定します(各ツールの比較については後述)。③人事マスタを構築するツール選定が完了したら、ツールの契約手続きや設定作業既存の人事システムからのデータ移行他システムとのAPI連携などの開発を開始します。ツール周りの作業は運営会社が支援してくれますが、人事システムとの連携などは自社で対応することが多く、情報システム部やIT部門と連携して開発を進めます。構築が完了したら受け入れテストを行い、人事業務やデータ分析が問題無く行えるかを確認します。④リリーステストが完了したら人事マスタをリリースし、本番運用を開始します。後述のスモールスタートで運用する場合は、複数回に分けてリリースすることもあります。人事マスタ構築のポイント人事部と情報システム部が連携して行う人事マスタを構築するためには人事・システム両方の知識が必要ですが、人事は後者、情報システム部は前者の知識に乏しいため、両者が連携しながら推進しましょう。また、人事とIT両方に詳しい人間を新規採用する手もあります。例えば、Chatworkを開発するkubellでは人事マスタの構築時にそうした人材を新規採用されたそうです(なぜkubell(チャットワーク)の「人事マスタ統合」はうまくいったのか——組織設計の観点から見てみると)。ただし、人事・IT両方に詳しい人材は市場に少ないので、採用には時間がかかる可能性が高いです。新規採用するのか既存社員に任せるのかは、自社の採用状況、社員のスキルなどを踏まえて検討しましょう。スモールスタートで行う最初から全社規模の人事マスタを構築しようとすると、様々なハードルが存在します。人事マスタは時間がかかる一方で費用対効果の計算が難しいため、経営陣の説得が難しい完成までに時間がかかりすぎ、いつまでもデータを活用できる状態にならないこれらを防ぐため、まずはスモールスタートで始めることをおすすめします。スモールスタートの方法としては2種類あります。特定の部署・事業部単位で人事マスタを構築し、徐々に全社に広げてゆく一部の情報を人事マスタに入れ、徐々に情報を追加してゆく(例)入退社・部署・等級→評価結果→賃金また、スモールスタートの場合は開発やリリースを複数回に分けて行うことになるので、どのタイミングでどの開発を行うのか、ロードマップを策定しておきましょう。(例)・1月に人事マスタをリリースし、入退社・部署・等級情報を追加・7月に評価結果情報を人事マスタに追加・10月に賃金情報を人事マスタに追加Excelでの人事マスタ構築の課題人事マスタをExcelで構築している企業も多いのですが、Excelには色々な課題があります。データの前処理が大変人事データの相関を調べるためには様々なデータが必要ですが、これらは複数のシステムに分散していることがほとんどです(社員情報はタレントマネジメントシステム、残業時間は勤怠管理システム、有給取得率はワークフローシステムなど)。そのため、各人事システムからデータをダウンロードするExcelで各データを突合するExcel上で集計やグラフ化を行うという工程を踏むことが多くなります。この1・2の作業を「前処理」などと呼びますが、データの種類や件数が増えるほど前処理の手間も大きくなります(一般的に、データ分析では8割の時間が前処理に費やされるとも言われています)。Excelでの集計が大変3の集計・グラフ化についても、色々と切り口を変えてデータを見る度に作業をやり直す必要があります。例えば、全社の残業時間データを見たい→次に部署別のデータを見たい→次に年代別のデータを見たい離職率と勤続年数の相関を見たい→次に残業時間とエンゲージメントスコアの相関を見たいのように色々な分析を行うと、集計やグラフ化だけでも大きな時間がかかります。人事マスタツールの比較上記を踏まえて、人事マスタを構築する際にはツールを導入することがおすすめです。ここでは人事マスタとして活用できるツールをいくつかご紹介します。人事特化型のBIツールデータの統合・集計などに特化したツールです。BIツールには「汎用型」「人事特化型」がありますが、人事マスタを構築するためには人事特化型のBIツールをおすすめします。※汎用型・人事特化型について詳しく知りたい方は、人事データ分析におすすめのBIツールをご覧ください。ここではクラウドワークスで開発している人事特化型BIツールのHuman & Humanをご紹介させていただきます。メリット人事でよく使うデータや図表を自動集計できる人事用のデータベースやレポートが標準で用意されているので導入しやすい学習コストが低いので人事のみでも運用できる他の多くの人事システムとAPI連携しており、データ集計などを自動で行えるデメリット機能が分析に特化しており、人事業務(人事考課、スキル管理、サーベイなど)は行えない人事情報システム(HRIS)様々な人事業務(人事労務・経理財務・採用管理・タレントマネジメントなど)をワンストップで行えるツールです。人事データを集約しやすく、HRISで完結してデータを分析しやすいのが特徴です。有名なツールはWorkday、Oracleなどです。メリット分析だけでなく様々な人事業務(人事労務、スキル管理、採用管理など)も行えるデメリット高額なものが多い(月額数百万円など)機能が豊富で学習コストが高い人事以外がデータを閲覧できるようにするのが難しいタレントマネジメントシステムタレントマネジメントに特化したツールです。システム内に社員情報やスキル情報が集約されている他、サーベイ機能なども搭載されているので、それらのデータを使って分析ができます。タレントマネジメントシステム上で管理されていないデータ(勤怠情報など)は、APIで他システムと連携することになります。有名なツールはカオナビ、HRBrainなどです。出典:カオナビメリット分析だけでなくタレントマネジメント業務(人事効果、スキル管理、サーベイなど)も行えるデメリットデータの集計・分析機能が弱い比較ポイントどの人事業務をどのシステムで行うか、人事マスタにどの役割を担わせるかによっておすすめのツールが変わります。ステップ①でTo Beをしっかり整理できているとツールの比較がしやすくなります。人事業務の運用方法人事マスタの運用方法おすすめツール人事マスタ以外で運用しているデータ分析だけを行いたいBIツール人事マスタ上で全て完結させたい人事マスタ上で全て完結させたいHRIS人事マスタ以外で運用しているタレントマネジメントやデータ分析を行いたいタレントマネジメントシステムBIツールについては以下で詳しく解説しているので、そちらをご覧ください。人事データ分析におすすめのBIツールHuman & Humanについて詳しく知りたい方は、以下より資料請求・トライアル申込お願いいたします。