最近は人事データの活用やピープルアナリティクスのためにBIツールを活用することが注目されています。本記事ではBIツールのメリット、おすすめのツールについて解説します。※人事データ活用の基本を知りたい方は人事データ活用にありがちな悩みを解決! 人事データの種類や分析のポイントも合わせてご覧ください。BIツールとは概要BI(Business Intelligence)ツールとはデータを分析し、意思決定に役立てるためのツールです。元々は営業やマーケティング活動に使われることが多かったのですが、昨今では人事データの活用にも使われています。メリットBIツールは人事の様々なシーンで活用することが可能であり、シーンごとにそのメリットは異なります。(例)採用人材の見極め精度が高まるスキル管理社員の能力や強みに合わせた人員配置ができる社員定着離職リスクの高い社員を把握できる人事評価データに基づいて客観的に社員を評価できる健康管理社員の体調不良を検知できるetc.注目される背景人事データの領域においてBIツールが注目される背景はいくつかあります。人的資本経営の浸透により、人事データを活用した人材価値や企業価値の向上が加速しているテレワークの浸透によりデータで人事や組織を把握する必要性が生じた人事データを活用できる様々なツールが登場したこうした背景から「ピープルアナリティクス」「HRアナリティクス」といった取り組みが盛んになり、その手段としてBIツールが注目されるようになりました。※詳しくはピープルアナリティクスの記事をご覧ください。他のツールとの比較Excelとの違い人事データの分析は従来Excelでも行われていましたが、BIツールを使うことでExcelよりも効率的に分析できます。Excelでの課題BIツールのメリット分析内容に応じてグラフやレポートを作り変えるのが大変分析でよく使うグラフを簡単に作成できる(例)散布図、ヒートマップ、ヒストグラム、箱ひげ図クラスター分析など高度な分析になるほどExcelで行うのが大変色々な分析機能が用意されている(例)時系列分析、相関分析、クラスター分析、回帰分析関数やマクロを作り込むほど属人化が進むレポートやダッシュボードがあれば誰でも分析ができるタレントマネジメントシステムとの違いタレントマネジメントシステムにも分析機能は搭載されていますが、分析に特化したツールではないため、色々な制約があります。BIツールであればより高度な分析ができます。タレントマネジメントシステムの分析機能の課題BIツールのメリットそのシステムの担当範囲しか分析できない(例)勤怠管理システムなら労働時間の分析のみ、サーベイツールならエンゲージメント分析のみ集約された人事データを全て分析できる高度な分析に対応できないことが多い(例)相関分析、クラスター分析、回帰分析色々な分析機能が用意されている例えば、某社のシステムでは現時点での社員や組織のデータのみ集計可能であり、特定時点(2025年1月時点など)に遡ってデータを見る特定時点(3年前など)から現時点までの時系列でデータの変化を見るといった集計ができません。また、サーベイを実施して社員の属性(部署や役職など)ごとにエンゲージメントの傾向を見ることはできますが、他の指標(離職率など)との相関分析、クラスター分析、回帰分析などの高度な分析はできません。タレントマネジメントシステム内で分析できない場合はデータをダウンロードしてExcelなどで行うことになります。※詳しくはタレントマネジメントシステムの解説記事をご覧ください。ETLツールとの違いBIツールとセットで語られるものの1つにETLツールがあります。ETLとはExtract/Transform/Load(抽出・変換・読み込み)の略称であり、データの抽出や加工を行うためのツールです。BIツールに限らず、データを分析するためにはそれが正しく整備されている必要があり、この作業を「前処理」と呼びます。もちろんBIツールでも簡単な前処理はできるのですが、「ファイルからデータの一部を抽出する」「複数のシステムからデータをダウンロードして突合する」など作業が複雑になるとBIツールでは対応できません。そこで、ETLツールでそういった前処理を行うことができます。DWHとの違いもう1つBIツールとセットで語られるのがDWH(データウェアハウス)です。これはデータを分析しやすいように1つに集約したシステムのことです。一般的に、企業の人事データはそれぞれ別々のシステムで管理されています。それらを分析しやすいように1つのシステムにまとめたものがDWHであり、人事データの領域では「人事マスタ」「人事データベース」などと呼ばれることもあります。人事データシステム社員情報タレントマネジメントシステム労働時間勤怠管理システム採用情報採用管理システムエンゲージメントスコアサーベイツールetc.※詳しくは人事データ分析に不可欠! 人事マスタ構築のポイントやツール比較も合わせてご覧ください。料金体系具体的な金額は会社によって異なるので、ここでは一般的なBIツールの料金体系を説明いたします。初期費用システムの導入時のみ発生する費用です。主にアカウントの開設、カスタマーサクセスなどのコストを回収するためのものですが、金額としては小さいため、初期費用を無料にしている会社もあります。ランニングコスト支払いサイクルは月次、半年、年次など会社によって異なりますが、月次が一般的です。初期費用に比べて解約まで継続的に発生するので、企業が金額を比較する際はランニングコストを重視する必要があります。ランニングコストは主に従量課金制ですが、ユーザー数か利用機能に応じて料金が増えることが多いです(両方を取り入れているシステムもあります)。ユーザー数課金機能課金概要システムを利用するユーザー(=社員)の数に応じて金額が増える仕組みシステムで利用する機能に応じて金額が増える仕組みおすすめの企業・従業員数が少ない場合・一部の事業部だけでツールを使う場合・色々な機能を使いたい場合・従業員数が多い場合・全社でツールを使う場合・一部の機能だけを使いたい場合どちらがおすすめかはツールの運用の仕方によって異なります。例えば、従業員数が多い企業で全社的にツールを使う場合、ユーザー数が多いのでユーザー数課金よりも機能課金を選んだほうが安くなります。逆に、機能課金は多くの機能を使うほど割高になるので、色々な機能を使いたい場合はユーザー数課金のほうが良いでしょう。BIツールの種類BIツールには色々な種類がありますが、人事データを分析する上では「汎用型」「人事特化型」の違いが重要です。汎用型人事データ以外(営業、マーケティングなど)の分析用途にも使えるBIツールです。(例)Tableau、Power BI、Looker Studio、Yellowfin、LaKeel BI人事特化型人事データの分析に特化したBIツールです。(例)パナリット、Human & Human汎用型と人事特化型の比較汎用型と人事特化型の違いを以下にまとめました。汎用型人事特化型設計コスト大小データの前処理コスト大小学習コスト大小柔軟な権限管理難易各項目について以下で説明します。設計コスト汎用型のBIツールで人事データを分析する場合、契約して運用開始するまでにデータベースの作成データベース同士の連携レポートやダッシュボードの作成などを行わなくてはなりません。レポートやダッシュボードについてはBIツールがテンプレートを用意してくれることもありますが、テンプレートに無いレポートを見たい場合は自分たちで作る必要があります。(例)Power BIでの人事データベースの設計図プロ野球選手の人事データを分析するため、「選手情報」「所属先情報」「職種情報」などの各データベースを連携している。こうした設計をゼロから行うのは大変。出典:人材マネジメントのダッシュボード~入社から退職までの履歴マスタを管理するまた、人事データの中には、他のデータを元に算出されるものがいくつかあります。(例)・労働生産性→1人あたりの売上や労働時間から算出・離職率→離職者数や社員数から算出・男女の賃金格差→社員の性別、賃金から算出汎用型のBIツールには項目の計算機能はありますが、こうした人事データの計算はデフォルトで設定されていないため、自分たちで1つずつ設定することになります。このことから、汎用型では設計に大きな時間が大きくかかります。一方、人事特化型のBIツールでは人事用のデータベースやレポートが標準で用意されているので、複雑な設計をせずともデータ分析を開始できます。人事データの計算についてもデフォルトで設定されており、人事データを取り込むだけで自動計算が行われます。データの前処理コストBIツールでの分析には「前処理」というプロセスが不可欠です。分析ができるようにデータを適切にBIツールに加工・管理する作業のことです。一般的に、データ分析では8割の時間が前処理に費やされると言われますが、人事領域では各人事データが複数のシステムに分散していることが多いため、前処理の手間も大きくなります(社員情報はタレントマネジメントシステム、残業時間は勤怠管理システム、エンゲージメントスコアはサーベイツールなど)。汎用型のBIツールは他の人事システムとAPI連携していないことが多いため、前処理には各人事システムからCSVをダウンロードするExcelやETLツールでデータを突合するBIツールにインポートするという手作業が必要になり、データの種類や件数が増え、作業頻度が週次・日次と増えるほど手間も大きくなります。(例)Power BIへのデータのインポートExcelやRDBやクラウドのファイルをPower BIにインポートしている。取り込むファイルが増えるほど手作業は増える。出典:Power BI レポートってデータソースへの接続モードでどれくらい速さに差が出るの?その① インポート vs DirectQuery vs ハイブリッド テーブル (Power BI Desktop 編)一方、人事特化型は色々な人事システムとAPI連携しており、データの取り込みを自動で行えるので手作業が少なくなります。また、データの加工・取り込みなどをサポートしてくれるツールもあります。学習コスト前述の通り、汎用型のBIツールは分析に関する機能が豊富です。色々な分析機能が用意されている(例)時系列分析、相関分析、クラスター分析、回帰分析分析でよく使うグラフを作成できる(例)散布図、ヒートマップ、ヒストグラム、箱ひげ図などしかし、自由度が高すぎる分、分析のノウハウに乏しい人事では使いこなすのが大変という難点もあります。一方、人事特化型は人事でも使いこなせるように機能やダッシュボードをシンプルにしていることが多いです。柔軟な権限管理人事データの中には全社員に公開できないセンシティブな情報があるため(給与・人事評価・離職情報など)、誰がどのデータにアクセスできるか、権限を柔軟に変更する必要があります。また、部門や役職など組織図に合わせて権限を変更することも多いです。(例)データアクセスできる社員全社員の給与情報人事部・経営陣営業部の労働時間営業部の管理職・人事部・経営陣しかし、汎用型BIツールはユーザー(社員)単位で権限を管理するものが多く、こうした柔軟な権限管理に対応していません。一方、人事特化型では権限を柔軟に変更できる機能が搭載されています。BIツールを導入するには比較のポイント実現したい内容前述の通り、BIツールで実現できることは多岐に渡るため、「BIツールを導入したい」だけではどのツールが最適か比較することが困難です。「エンゲージメントと他の指標の相関を分析したい」など、具体的に何を実現したいかを整理しましょう。権限管理人事データには個人情報が多数含まれており、個人情報保護の観点から取り扱いに注意する必要があります。そういったデータをBIツールで管理する場合、社員の所属や人事データの利用目的に応じてアクセス権限を調整する必要があります。(例)給与情報は人事部、管理職、経営陣だけが閲覧できるようにするそういった権限管理の機能を搭載しているかどうかを確認しましょう。※人事データの保護についてはプライバシー保護の解説記事をご覧ください。コスト前述の通りBIツールの多くは従量課金制ですが、単価は会社によって大きく異なります。安いに越したことはありませんが、安くて機能が少ないシステムを選んだ結果、要件を実現できなくなるのは本末転倒です。システムを利用するユーザー数や機能を想定してコストをシミュレーションし、要件と比べて金額が見合うかを検討しましょう。操作性機能が豊富でもUIが分かりづらかったり、動作が重くて使いづらいことがあります。多くのBIツールではトライアルを提供しているので、トライアルで操作性を確認しておきましょう。カスタマーサポート多くのBIツールでは導入後にカスタマーサポートへの問い合わせなどができますが、それ以外のサポートを用意していることもあります。どのようなサポートがあるかは確認しておきましょう。(例)カスタマーサクセス担当者が付き、運用が立ち上がるまで伴走してくれるFAQやユーザーコミュニティが用意されており、疑問点を解消しやすいBIツール導入時の注意点どのシステムを導入する際でも共通して注意すべき点を解説いたします。人事システムや人事データへの影響の整理別の人事システムを運用しているところにBIツールを導入すると、人事データが分散したり運用が混乱する恐れがあります。よって、導入による人事システムや人事データへの影響を理解しておく必要があります。導入前導入後各業務がどの人事システムで動いているかどの業務がBIツールに置き換わるか各人事データがどの人事システムで管理されているかどの人事データがBIツールで管理されるかシステム間がどのように連携しているかBIツールと既存システムがどのように連携するかBIツールの導入ステップ要件を整理する実現したいこと、コスト、他システムとの連携など求める要件を整理します。BIツールを比較する要件を元にシステムをいくつか選定&トライアルし、どれにするかを検討します。BIツールを構築する導入するシステムが決定したら、ツールの契約手続きや設定作業既存の人事システムからのデータ移行他システムとのAPI連携などの開発を開始します。ツール周りの作業は運営会社が支援してくれますが、人事システムとの連携などは自社で対応することが多く、情報システム部やIT部門と連携して開発を進めます。構築が完了したら受け入れテストを行い、データ分析が問題無く行えるかを確認します。リリーステストが完了したらBIツールをリリースし、本番運用を開始します。人事特化型BIツールの紹介ここでは人事特化型の代表的なBIツールを2つご紹介します。Human & Humanクラウドワークスで開発しているツールであり、人事データの集計や活用に特化しています。人事でよく使う色々なデータベースや計算式がデフォルトで用意されているため、設計コストやデータのコストを小さく抑えることができます。また、他の多くの人事システムとAPI連携している他、データクレンジングのサポートもしてくれるため、データ分析の8割とも言われる前処理コストを大きく削減できます。1クリックで色々な軸でデータを分析でき、複数軸のかけあわせもできます。(例)部署別×男女別の離職率散布図やヒートマップを使って複数の人事データの相関を調べることもできます。(例)残業時間と離職率の相関また、取り込んだ人事データを元に、人的資本開示の項目を自動集計してくれます。パナリットパナリット株式会社で開発しているツールであり、人的資本の可視化をミッションとしています。人財諸表®という機能では、人的資本に関する多くのKPIを簡単に可視化できます。出典:パナリット | 人的資本の可視化ツールKPIの可視化がしやすいように多くの人事システムと連携している他、データクレンジングの代行なども行なっているようです。また、パナリットに取り込んだデータをグラフ化したり、色々な軸で分析することもできます。各ツールの機能を詳しく知りたい方は資料請求やトライアルでご確認ください。Human & Humanについて詳しく知りたい方は、機能や導入事例をご覧いただくか、以下よりお問い合わせお願いいたします。