本記事では人事労務システムの概要や人事データ分析の課題について解説いたします。人事労務とは人事労務の概要人事労務とは「人事管理」「労務管理」を合わせた業務の総称です。いずれも企業で働くヒトに関する業務であり非常に近しい領域であるため、総称して「人事労務」と呼ばれることが多いです。人事管理は従業員が高いパフォーマンスを発揮しながら働くための仕組み作りなどを目的としており、以下のような業務が該当します。業務概要詳細採用管理組織に必要な人材の洗い出しや採用活動を行うこと人材育成社員のスキルアップのために研修などを企画・実施すること人材配置社員の能力や適性などを踏まえて適切な部署・役職などに配置すること人事評価社員の働き方や成果に応じて適切な評価を行う、または評価のための制度やルールを作ること離職防止社員の離職を防ぐ、定着を図るためにサーベイ・人事制度の構築などを行うこと労務管理は従業員が安全で健康に働けるための労働環境の整備などを目的としており、以下のような業務が該当します。業務概要詳細給与計算労働時間や税金、控除などを元に社員の給与金額を計算し、期日までに振り込むこと勤怠管理社員の労働時間や残業時間を適切に管理し、法定労働時間を超えた、または残業時間の多い社員がいれば是正を行うこと社会保険手続き社員の入退社時に社会保険への加入・脱退の手続きを行うこと健康管理社員の健康状態を維持するために健康診断・ストレスチェック・福利厚生の提供などを行うこと安全衛生管理職場環境の衛生状態を維持するために清掃や物品の点検・禁煙などを行うこと人事労務とタレントマネジメントの違いタレントマネジメントは組織の成長や人事戦略の達成のために人材を管理する手法です。人事労務と似ていますが、人事労務は社員が安全に働けるための仕組みやルール作りといった「守り」が重視されやすいのに対し、タレントマネジメントは組織の成長、パフォーマンス最大化といった「攻め」が重視されやすい点が異なります。※タレントマネジメントについてはタレントマネジメントの解説記事をご覧ください。人事管理労務管理タレントマネジメント目的組織の管理、人事の業務効率化労働環境の整備、雇用管理組織の成長、人材の活用業務例社員情報の管理勤怠管理社員情報の管理入退社管理給与計算社員のスキルマッピング採用管理入退社管理サーベイ人事評価年末調整目標管理人事労務システムの概要人事労務システムの機能とメリット人事労務システム(人事労務ソフトとも呼びます)とは名前の通り人事と労務を行うためのシステムであり、基本的には人事と労務両方に対応して以下のような機能を搭載しています。機能概要メリット社員情報の管理社員の基本情報(姓名・部署・役職・入社年度など)を管理し、社員マスタとして活用できる入退社管理社員の入社・退社処理をスムーズに行える採用管理候補者の選考状況、面接官への申し送りなどをスムーズに管理できる人事評価上司から部下への評価、360度評価などを簡単に行える勤怠管理社員の出退勤時間・有給残日数などを管理できる給与計算勤怠情報に紐付けた給与計算、給与明細の発行、年末調整などを簡単に行える人事労務システムの種類人事労務システムは「一体型」と「特化型」の2種類に分けられます。一体型前述の人事労務全てに対応できるタイプです(中にはタレントマネジメント領域に対応できるシステムもあります)。メリットは1つのシステムで業務を完結できる点、人事データの一元管理をしやすい点ですが、機能が豊富な分高額になりやすい、学習コストが高いといったデメリットもあります。また、特化型に比べて機能やできることに制約があることも多いです。例えば、一体型にも給与計算機能は搭載されていますが、給与計算に特化したシステムに比べれば弱い部分があります。特化型人事労務の中でも特定の業務に特化したタイプですが、その中でも労務全般をカバーできるもの、勤怠管理機能が強いもの、給与計算機能が強いものなど色々な種類があります。人事や労務に特化したシステムは「人事管理システム」「労務管理システム」などと呼ばれます。メリットは一体型に比べて安価で学習コストが低い点ですが、1つのシステムで全ての人事労務をカバーできないので複数のシステムが必要になる点はデメリットです。複数のシステムを導入すると学習コストも増えるので、一体型に比べると却ってトータルのコストが高くなってしまう恐れもあります。また、人事データが複数のシステムに分散してしまうため、データ一元管理が難しい点もデメリットです。一体型、特化型の特徴をまとめると以下の通りです。特徴一体型特化型価格高い低い※複数システムを導入することでトータルで割高になる恐れあり学習コスト高い低い※複数システムを導入することでトータルで割高になる恐れあり人事データの一元管理易しい難しい人事労務システムの料金体系具体的な金額は会社によって異なるので、ここでは一般的な人事労務システムの料金体系を説明いたします。初期費用システムの導入時のみ発生する費用です。主にアカウントの開設、カスタマーサクセスなどのコストを回収するためのものですが、金額としては小さいため、初期費用を無料にしている会社もあります。ランニングコスト支払いサイクルは月次、半年、年次など会社によって異なりますが、月次が一般的です。初期費用に比べて解約まで継続的に発生するので、企業が金額を比較する際はランニングコストを重視する必要があります。ランニングコストは主に従量課金制ですが、ユーザー数か利用機能に応じて料金が増えることが多いです(両方を取り入れているシステムもあります)。ユーザー数課金機能課金概要システムを利用するユーザー(=社員)の数に応じて金額が増える仕組みシステムで利用する機能に応じて金額が増える仕組み(例)給与計算機能を使うと+2万円おすすめの企業・経営者や人事部など、一部の人間だけでシステムを利用する場合・色々な機能を使いたい場合・事業部なども含めて全社的にシステムを利用する場合・一部の機能だけを使いたい場合どちらがおすすめかはシステムの運用の仕方によって異なります。例えば、人事部だけでなく事業部など全社的にシステムを利用する場合、ユーザー数が多いのでユーザー数課金よりも機能課金を選んだほうが安くなります。逆に、機能課金は多くの機能を使うほど割高になるので、色々な機能を使いたい場合はユーザー数課金のほうが良いでしょう。人事労務システムを導入するには人事労務システム比較のポイント実現したい内容前述の通り、人事労務で実現できることは多岐に渡るため、「人事労務をやりたい」だけではどのツールが最適か比較することが困難です。「勤怠管理を効率化したい」「給与計算を楽にしたい」など、具体的に何を実現したいかを整理しましょう。権限管理人事データには個人情報が多数含まれており、個人情報保護の観点から取り扱いに注意する必要があります。そういったデータを人事労務システムで管理する場合、社員の所属や人事データの利用目的に応じてアクセス権限を調整する必要があります。(例)給与情報は人事部、管理職、経営陣だけが閲覧できるようにするそういった権限管理の機能を搭載しているかどうかを確認しましょう。※人事データの保護についてはプライバシー保護の解説記事をご覧ください。コスト前述の通り人事労務システムの多くは従量課金制ですが、単価は会社によって大きく異なります。安いに越したことはありませんが、安くて機能が少ないシステムを選んだ結果、要件を実現できなくなるのは本末転倒です。システムを利用するユーザー数や機能を想定してコストをシミュレーションし、要件と比べて金額が見合うかを検討しましょう。操作性機能が豊富でもUIが分かりづらかったり、動作が重くて使いづらいことがあります。多くの人事労務システムではトライアルを提供しているので、トライアルで操作性を確認しておきましょう。カスタマーサポート多くの人事労務システムでは導入後にカスタマーサポートへの問い合わせなどができますが、それ以外のサポートを用意していることもあります。どのようなサポートがあるかは確認しておきましょう。(例)カスタマーサクセス担当者が付き、運用が立ち上がるまで伴走してくれるFAQやユーザーコミュニティが用意されており、疑問点を解消しやすい人事労務システム導入時の注意点どのシステムを導入する際でも共通して注意すべき点を解説いたします。人事システムや人事データへの影響の整理別の人事システムを運用しているところに人事労務システムを導入すると、人事データが分散したり運用が混乱する恐れがあります。よって、導入による人事システムや人事データへの影響を理解しておく必要があります。導入前導入後各業務がどの人事システムで動いているかどの業務が人事労務システムに置き換わるか各人事データがどの人事システムで管理されているかどの人事データが人事労務システムで管理されるかシステム間がどのように連携しているか人事労務システムと既存システムがどのように連携するか人事労務システムの導入ステップ要件を整理する実現したいこと、コスト、他システムとの連携など求める要件を整理します。人事労務システムを比較する要件を元にシステムをいくつか選定&トライアルし、どれにするかを検討します。人事労務システムを構築する導入するシステムが決定したら、ツールの契約手続きや設定作業既存の人事システムからのデータ移行他システムとのAPI連携などの開発を開始します。ツール周りの作業は運営会社が支援してくれますが、人事システムとの連携などは自社で対応することが多く、情報システム部やIT部門と連携して開発を進めます。構築が完了したら受け入れテストを行い、人事業務やデータ分析が問題無く行えるかを確認します。リリーステストが完了したら人事労務システムをリリースし、本番運用を開始します。人事労務システムでの人事データ分析の課題昨今では人的資本経営、ピープルアナリティクスなどの浸透に伴い、人事データを活用・分析する取り組みが活発化しています。人事労務システムには様々な人事データ(社員情報、労働情報、給与情報、人事評価など)が管理されているため、人事労務システムを使ってデータ分析を行う企業が多いのですが、ここでいくつかの課題が発生します。プライバシー保護が難しい人事労務システムには給与情報やマイナンバーなどの機密情報も管理されているため、人事以外の社員に権限を渡すのはプライバシー保護などの観点で問題になります。よって、事業部の社員が人事マスタを触ってデータを分析するのが困難になります。データ分析機能が弱い人事労務システムは分析に特化したシステムではないので、分析機能に制約が多い、分析しづらいデータ構造になっているといったデメリットもあります。例えば、某社のシステムだと以下のような課題があります。現時点での社員や組織のデータを集計できるが、特定時点(2025年1月時点など)に遡ったり、特定時点(3年前など)から現時点までの時系列でデータの変化を集計できないサーベイを実施して社員の属性(部署や役職など)ごとにエンゲージメントの傾向を見ることはできるが、他の指標(離職率など)との相関分析、クラスター分析、回帰分析などの高度な分析はできない人事労務システム内で集計できない場合はデータをダウンロードしてExcelなどで行うことになりますが、Excelでデータを加工・集計したりグラフや図を作るのにも時間がかかるため、Excelでの分析も簡単とは言えません。分析ツールこうした事情から、人事労務システムは運用しながらも、人事データの分析には別のシステムを導入する方法があります。別システムとしてはタレントマネジメントシステム、BIツールなどが代表例です。この方法のメリットは人事労務システムよりも分析がしやすい点です。また、マイナンバーなどの機密情報については人事マスタに入れない、事業部の社員は機密情報を閲覧できないようにアクセス権限を調整すれば、事業部の社員に権限を渡してデータを分析するのも容易です。一方、別システムを導入するため学習コストや導入コストが高いこと、データ連携が大変な点はデメリットです。人事労務システムで分析する別のシステムで分析するメリット学習コストやシステム導入コストが低い分析がしやすいデータ連携がしやすい人事以外の社員にも権限を渡しやすいデメリット分析に制約がある学習コストやシステム導入コストが高い機密情報が見えてしまうので人事以外の社員に権限を渡しづらいデータ連携が大変※それぞれのツールについてはタレントマネジメントシステムの解説記事、BIツールの解説記事をご覧ください。BIツールを使う場合、クラウドワークスで開発しているHuman & Humanがおすすめです。Human & Humanの特徴は以下の通りです。設計コスト人事でよく使う色々なデータベースや計算式がデフォルトで用意されている。データの集計コスト他の多くの人事システムとAPI連携している他、データクレンジングのサポートも用意。権限管理部署・職種・役職に合わせて各データの閲覧・編集権限を管理できる。学習コスト1クリックでデータのかけあわせができるので、データ分析に詳しくない人事でも簡単に操作可能相関分析散布図やヒートマップを使って簡単に分析できる。(例)データを時系列で分析できる他、指標をかけあわせた分析も1クリックで可能(例)ヒートマップで相関の強い指標を一目で把握できるHuman & Humanについて詳しく知りたい方は、機能や導入事例をご覧いただくか、以下よりお問い合わせお願いいたします。